「スウィベルナイフ(Swivel Knife)」は、日本ではスーベルカッターまたはスーベルナイフともよばれ、革に刻みを入れるためのナイフですが、その名のとおり、スウィベル(Swivel:旋回)することで、革を回すことなく切り込みを入れることが可能です。
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まず、この特殊な形をしたスウィベルナイフの役割について説明します。
現在、多くのメーカーで作られているモデル
- ボディー
- バレル(Barrel)
- スウィベルナイフの本体であり、一般的には親指・中指・薬指で握る。カットの際に滑らないようグリップ部分には刻みが入っている。ブレードとヨークをネジなどで固定できるようになっている。
- <素材>
スチール・ステンレス・真鍮・亜鉛合金(鋳物)など。バレルの素材はメーカーによりさまざまであるが、グリップの摩耗・重量を基準に選ぶのがよい。スチール・ステンレス・アルミニウムは摩耗しにくい。それに比べて真鍮や鋳物製は摩耗しやすく、経年によりグリップ力が落ちるが、比較的安価な製品が多い。また、アルミニウム製は軽く、刃先の感覚が掴みやすい。 - <太さ>
バレルは太さ・長さが複数用意されているが、太さはカットの旋回の量とナイフ全体の重量に関係する。一般に細いバレルは太いバレルに比べて少ない指の操作で多く旋回する。スクロールなどのカットに有利であるほか、革の向きを頻繁に変えずに作業することも可能となる。一方で太いバレルは重量も比例して重くなる場合が多いが、厚い革やカービング終盤の半乾きの革で深いカットを入れるのに適している。特にデコレーションカット(デコラティブカット)やフィンガーカービング(フェザーカット)のような、カット自体を魅せる状況において、太いカットを好む人(特に厚刃を使用する人)には、ナイフ自体の重量を利用してカットできるメリットがある。
- <長さ>
バレルの長さは、太さ同様に重量に関係するが、ヨークまでの長さに密接にも関係している。まず、ボディーの長さ調節機能がない場合はバレル自体がボディーの長さを決めてしまうため、長さも複数ラインナップがある場合が多い。長さ調節機能がある場合は、バレルの中にバレルより少し短いアジャスタブルシャフトが収納されているので、バレルの長さの1.5〜1.8倍まで伸ばせると考えられる。
- ヨーク(Yoke)
- 人差し指を掛けるための取手。一般的にはY字になっており、質の高い製品は指に負担をかけないように湾曲している。また、今日はほとんど製造されていないが、Y字のほかにO字になったものも存在する。素材はスチール・ステンレス・真鍮・亜鉛合金(鋳物)など。
- アジャスタブルシャフト(Adjustable Shaft)・ネック(Neck)
- バレルからヨークの間にある棒状の部位であり、一般的にはヨークと一体になっている。ネックは実際には2つの部位に分れており、この2つの接続部が旋回することでスウィベルナイフの方向をバレル部分の操作だけで行うことが可能となる。今日では、この旋回をよりスムーズにするためにボールベアリング(Ball Bearing)を内蔵しているタイプが多い。
また、使用者の手のサイズによってスウィベルナイフは扱いやすさが異なるため、この部分を伸ばしたり縮めたりすることで長さを調節することができる。旧来のモデルではネックに取り付けられたアジャスタブルナット(Adjustable Nut)を緩め、ネックの長さを調節していた。 ただ、アジャスタブルナットは固定が長く持たず、しばしば緩んでしまうという欠点もあり、アジャスタブルナットを用いているスウィベルナイフは今日ではそう多くな。その代りとして2つのセットスクリューを用いてブレード・ヨーク両方を留める仕様が一般化している。
更に一部のメーカーでは長さ調節機能は無しで、バレルの長さ自体を複数サイズ用意しているものもある。
- ブレード(Blade)
- 革をカットする部分、またはブレードシャフトを含む全体をブレードと呼ぶ。用途に合わせて形状や素材を選ぶ。
- <素材>
素材はスチール・ステンレス・特殊合金など。
- <形状>
葉の形状は目的によりさまざまで、一線刃と複線刃に分けられる。一般的なフローラルパターンに用いられるのはカットラインが1本の一線刃であり、「替刃」と呼ぶのは通常このタイプとなる。一線刃は太さ・厚み刃先の角度などが多様で、デザインやバレルの太さで決める。複線刃にはビーダーブレードとヘアブレードの2種類があり、ビーダーブレードは主にボーダーラインなど2つの並行するラインをカットする場合に用いる。ヘアブレードはフィギュアカービングにおいて、毛や水の流れなどを表現する際に用いる。
- ブレードシャフト(Blade Shaft)
- バレルへ取り付ける部位。バレル側の穴の径とブレードシャフトの径が一致していないと正常に使えない。ブレードシャフトには円柱状のものと一部が平らになった円柱状(D型)がある。構造的にはD型の方が刃がずれにくいと考えられるが、セットスクリューの長さにも注意する必要がある。
- セットスクリュー(Setscrew)
- ブレードをバレルに取り付けた際にブレードが脱落しないように固定するためのネジ。一般的にはマイナスネジや六角ネジが用いられる。一般的にボディーとヨークは異なったメーカー同士で取り付けることは考えにくいが、ブレードは規格が同じであれば互換性が生じるため、異なったメーカーのものを取り付けることがある。その際、ブレードシャフトが円柱型かD型かによってはセットスクリューが長すぎたり届かなかったり(届かい場合は円柱部分に当てれば解決する)するので、注意が必要。
ホビー用工具として作られ始めた頃のモデル
スウィベルナイフは本体にあたるボディー部分と先端のブレードの部分に分けられ、取り外しが可能なので、それぞれ用途に応じて選ぶことが可能です。 ただし、取り付けに際しては、アタッチメントの規格があるので、異なったメーカーのボディーにブレードを取り付けるときには取り付け可能か確認する必要があります。
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ブレードの選び方
ブレードの種類には幅・厚さ・角度の違いがあり、それぞれ用途によって使い分けます。
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- 厚さ
- ブレードの厚さはカットの太さと直結しており、厚い刃を使用すれば太いライン、薄い刃を使用すれば細いラインになります。 必然的に大きな図案(ex. 直径7cmを超えるフローラルパターン)では厚い刃が有効ですし、小さな図案では刃先の見えやすさも考慮すると薄い刃が推奨されます。 ただ、大きな図案でも細め(小さめ)のパーツ(花や葉)を配置している場合は薄い刃が有効な場合もあります。
- 幅
- ブレードの幅はカットの効果に直接影響を与えるものではありませんが、広めのブレードはなだらかなカットの際にガイドの役にも立ちます。 一方、狭めのブレードは刃先が見えやすいことから、細かなデザインに向いています。 3/8"を平均的なサイズとすると、1/4"は狭め、1/2"以上は広めになります。 ただ原則として、ブレードの幅はボディーの太さと同じか、それより小さくする必要があります。
- 角度
- ストレート(平坦)とアングル(傾斜)の2種類があり、通常のデザインカット及びデコレーションカットではストレートの刃を使用します。 一方、葉や花弁の波状部分、細かな図案、フィギュアカービングなどには細かな動きに対応できて、刃先のよく見えるアングルの刃が便利です。
- 切れ味
- 切れ味は、使用している鋼材や仕上げの程度によって異なります。 多くのメーカーは、最初からよく切れるような仕上げをしていますが、 鋼材については大雑把に言って、1,000円未満の製品は軟鉄を使用し、1,000〜5,000円の製品は鋼鉄を使用し、それ以上の製品は特殊合金を使用しています。硬い鋼材を使用したブレードは、より尖らせて切れ味を上げることが可能であると同時に、切れ味の持続も長くなります。
ボディーの選び方
スウィベルナイフのボディーは、太さ・長さによって分類されますので、手に合ったサイズのものを使用することをお勧めします。
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- ボディーの太さ
- ボディーの太さは用途で選びます。フローラルパターンの中でもデザインカットには細めが有効であり、デコレーションカットには太さ(重さ)が有効に働く場合があります。ただ、小さい図案の場合、バレルの太さ自体が刃先を隠す可能性があるので、図案の大きさも基準となります。
- ボディーの長さ
- 多くのスウィベルナイフでは、ボディーの長さは調整できる仕組みになっています。 特に初心者の場合、ボディーが利き手の側に傾いて革をえぐるようなラインになってしまうことがあり、悪い癖をつけないために、長めのボディーを使用することで矯正することが可能です。 ただ、長めのボディーは指が疲れやすくなるため長時間の作業には向いていないという短所もあります。 適切な長さのボディーを選ぶための方法として、親指と中指をくっつけ、人差し指を伸ばした状態で、親指から人差し指の第2間接までの長さを測ります。 そのときに、スウィベルナイフを縮めた時の長さがこれを超えないものを選んでください。
- ベアリング精度
- メーカーによってはスウィベルナイフの旋回をよくするために、精度の高いベアリングを使用しています。 レフティーズではこれまで独自に、アメリカの有名な職人たちが使用している工具を見せてもらったり使わせてもらったりしてきましたが、ベアリングの精度は作品の出来栄えに直結しているという結論には至っていません。 ただ、普段スムーズなスウィベルナイフを使用していると、旋回の悪いスウィベルナイフが使いにくいということはよくあります。 したがって、複数のスウィベルナイフを使い分けるにしても、異なったメーカーのものを所持すると持ち替えるたびに違和感を感じることになりますので、注意が必要です。
- 重さ
- 重さは好みに左右されます。ある程度重量がある方が刃を入れやすいという人、できるだけ軽い方が精密なカットには適しているという人、用途や慣れ・感覚で決めるべきです。 重いボディーとは、鋳物・ステンレス製や真鍮製のバレルを使用したものです。軽いボディーとはアルミを使用したものです。また、カスタムメイドのメーカーによっては木を使用したバレルもあります。
- 握りやすさ
- 握りやすさはバレルの太さにも影響されますが、一般的には表面のチェックの刻みが握りやすさを左右します。 刻印同様に、メッキ処理されたバレルの場合、表面が丸みを帯びるので滑りやすくなります。 それに対して、メッキ処理されていない真鍮製・ステンレス製・アルミ製のバレルは握りやすい(指への食いつきが良い)のが特徴です。
ただし、一部のメーカーはメッキ処理ではなく酸化被膜を作る加工をしています。これはメッキ処理とは同列に扱いません。
- 人差し指の掛けやすさ
- ヨークの形状によって決まります。ヨークは一般的にU字型をしていますが、金属の板を単純にU字型に曲げただけなのか、底面を削って丸みを付けているか、底面を丸く曲げて指によりフィットさせるか、という一工夫によって指の掛かりやすさが変わってきます。 また、指の掛かりはヨークの形状だけでなく、長さの影響も受けるため、指が掛けやすい長さに調整することも重要です。
スウィベルナイフの規格について
スウィベルナイフはボディーと替刃の取り付け部位がメーカーによって異なっており、この形状・直径に互換性がある必要があります。当店ではそれを「規格」と呼び、「タンディー規格」「オリジナル規格」と大別しています。「オリジナル規格」は更にメーカーの名称を当てはめて「〇〇規格」と呼称しています。「タンディー規格ボディ」「タンディー規格替刃」「オリジナル規格ボディ」「オリジナル規格替刃」
◎メーカー推奨 〇互換性あり ×互換性なし | タンディー規格替刃 | オリジナル規格替刃 | タンディー ・アイバン | チャック スミス | T&L ヘンリー | プロ シリーズ | バリー キングTD | クラフト社 | 協進エル | バリー キングBK | レザーラン グラーズ | タンディ|規格ボディ | タンディー・アイバン | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | × | × | チャックスミス | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | × | × | T&Lヘンリー | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | × | × | プロシリーズ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | × | × | エドラベア | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | × | × | C.S.オズボーン | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | × | × | レッドオックス | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | × | × | クラフト社 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | × | × | 協進エル | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ◎ | × | × | オリジナル規格ボディ | バリーキング | × | × | × | × | × | × | × | ◎ | × | レザーラングラーズ | × | × | × | × | × | × | × | × | ◎ | ハクバース | × | × | × | × | × | × | × | × | × | ドンキング | × | × | × | × | × | × | × | 〇 | × | ビルウドルフ | × | × | × | × | × | × | × | 〇 | × | ゴアツール | × | × | × | × | × | × | × | × | × | 角度調整器 | クラフト社 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | × | × | クラフト社SS | × | × | × | × | × | × | × | ◎ | × | 協進エル | × | × | × | × | × | × | ◎ | × | × | 協進エルBK用 | × | × | × | × | × | × | × | ◎ | × | ビッグレッド | 〇 | ◎ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
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